長野県内「ゲーム障害」の現状についての最新情報

2020長野の子ども白書掲載予定の記事を紹介します。

2020長野の子ども白書第2回執筆者会議が終了した時点で、編集委員会事務局にはすでに多くの記事が寄せられています。それぞれの分野やテーマに関して、現在最も新しい情報を提供していただいています。関心を集めているテーマについては、執筆者のご了解を得て事前に紹介させていただきます。尚、5月発行の2020長野の子ども白書掲載記事と部分的に異なる点があることをご了承ください。また、記事について執筆者に直接お問い合わせいただくことはご遠慮ください。

2020長野の子ども白書掲載予定記事を紹介①

「ゲーム障害」の現状について

(執筆者:長野県精神保健福祉センター所長 小泉典章さん)

近年、インターネットやスマートフォンが急速に普及し、インターネットやゲーム障害の問題が深刻化しており、健康を害する懸念が強まっています。また、ゲーム時間の問題のみならず、過剰な課金は借金にもつながり、ギャンブル等依存症と同様の問題を引き起こしています。県内でもゲーム障害の子どもは増えている傾向が認められ、長野県精神保健福祉センターに寄せられる相談件数は、2014年度が4件、2016年度から急増し、2017度が12件、2018年度が22件と倍増し、2019年は12月末までに24件に達しています。
2019年5月に世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11版(ICD-11)には、初めて「ゲーム障害」が依存症として認定されました。世界保健機関は、「ゲーム障害」を①ゲームの時間や頻度などを自分で制御できない②人生における他の関心事や日々の活動より、ゲームを優先する③学校や職場、家庭などにおける日常生活に支障をきたしてもゲームを続ける――という状態が12カ月以上続く、と定義しています。症状が重い場合は、より短期間でも「ゲーム障害」と診断されます。
「ゲーム障害」への理解をはかることを目的に2019年12月24日に当センターは研修会を開催しました。講師はゲーム障害について、久里浜医療センターのインターネット依存症治療専門部の医師と、ネット依存対策キャンプの取組について、国立高遠青少年自然の家の担当者にお願いしました。
当センターの研修会の受講者(行政機関、医療機関、福祉施設、教育機関等の職員が主に参加)対象の予備調査では、半分以上の方が「ゲーム障害」の相談経験があったそうです。相談対応した中では、中学生の相談が約半数で、もっとも多く、高校生、小学生、成人の順でした。平成30年度の相談件数343件のうち、重症と思われるケースは58件(16.9%)でした。この重症の定義は難しいのですが、食事をとらずにゲームをやり続け、健康を害し小児科へ入院したケース。長時間のゲームにより、背中が曲がってしまったケース。夜間はひたすらゲームをし続け、朝になってから寝るため、昼夜逆転となり不登校となっているケース、等があったそうです。研修会の受講者に対するプレリミナリーな調査ですが、本県の「ゲーム障害」の深刻な実態の一端が窺われました。
久里浜医療センターは厚生労働省の委託を受けて、2019年度、実態調査の結果を発表しました。2019年1~3月、全国の10~29歳の男女9千人を対象に実施し、回答率は56.9%。過去1年間に85・0%がゲームをしており、平日1日当たりの時間がもっとも多いのは「1時間未満」で40・1%、「3時間以上」は18・3%で、この中には「6時間以上」も2・8%いました。
ネットの利用については、長野県教育委員会で毎年実施している「インターネットについてのアンケート」の令和元年度の調査結果が発表されています。スマホ利用率は毎年、伸びており、本年度は小学生50.5%、中学生58・6%で、高校生98.3%、中学生では前年度初めて5割を越えましたが、本年度は小学生でも5割を越えています。県教委の同じ調査によると、インターネットを学校の授業以外で利用する児童生徒のうち、オンラインゲームをしていると回答したのは、小学生男子85.0%、女子75.1%、中学生男子82.4%、女子61.3%、高校生男子90.5%、女子60.9%、でした。例年実施されている、このアンケートの調査目的は、ゲームの利用だけでなく、出会い系サイトのような有害な使用にも重点が置かれています。
インターネットへの依存には、ゲーム以外にもSNSなどへの依存もありますが、久里浜のネット依存症専門外来を受診する人の9割はゲームへの依存だそうです。久里浜の樋口進院長のご厚意により、ネット依存治療部門関連の資料を参考にし、ゲーム障害について解説します。
(つづく)



Posted by 長野の子ども白書編集委員会. at 2020年01月29日20:19

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