戦争を知らない元教師が8月15日にふり返る「平和教育」の反省と後悔と。

戦争を知らない元教師が8月15日にふり返る「平和教育」の反省と後悔と。

 戦後のベビーブームに生まれた団塊の世代は「新しい憲法」のもとで育てられました。「二度とふたたび教え子を戦場に送らない」という旗を掲げた教師たちの熱い思いに守られて「平和教育」を受けた世代です。目標に「平和を希求する」と明記された教育基本法ができた1949年、私は生まれました。「日本はもう二度と戦争はしない」という安心感がありました。 (2006年に改悪され削除されてしまいましたが)
                                                                                            でも、その後朝鮮戦争やベトナム戦争に米軍が参戦すると、日本が後方支援基地になっていることに対して、大きな反対運動がおこりました。「ベトナム戦争反対」の運動は若い世代にも広がりました。高校生だった私が、所属していた同人誌に初めて送った原稿は「渦の中から」という、フィクションでした。急に学校に来なくなった同級生が、ある日広い自分の家の庭で焼身自殺した・・・というストーリーでした。その頃の非力な自分と重ねていたのかもしれません。当時の高校の教師たちが多くの政治課題に生身で抗議行動しているのをまじかで見ました。「**反対」というプレートを胸に付けて駅前でビラ配りをし、ストライキにも入りました。私たちは学校を休まず教師の来ない教室でいつになくおとなしく自習していたのを覚えています。
 
 その後将来の自活のために「教師」になりました。高度経済成長期で、公務員の給与は民間の半分くらいで、誰でもなりたければ教師になれた時代だったと思います。「でも・しか教師」とか呼ばれた時代です。大学時代は政治的課題にかかわる(大学紛争も含めて)ことが多かったせいか、卒業時、地元の教育学部から教職採用試験を受けた人がほとんど合格する中、人生初めて「不合格)通知をもらいました。同じように不合格になった人は他県の二次募集に受かって県外へ行きました。

 採用年齢制限(今はない)ぎりぎりに採用試験を受けて合格し、定年まで子どもたちと過ごしました。1980年代「日の丸君が代」が職員会の議題になり始めました。学校行事のたびに必ず飾られる日の丸の旗と歌われる「君が代」は、「お国のために」と戦場に散った兵士の悲しみの象徴であり、「天皇陛下万歳」と命を棄てさせた「君」を讃える歌なので、子ども達に強制することを拒んだ教師たちの闘いでした。今でも壇上で日の丸の旗に敬礼させる慣行があります。東京都や大阪府では「君が代」を歌わない(起立しない)教職員を処分したり解雇したりすることが始まりました。「憲法違反」と主張する教師たちに対し、政権は「国旗・国歌に制定する」という方法で『合法化』しました。(1999年)小学校の来入児種目に「旗ひろい」という種目があり、日の丸の旗を拾う伝統がありました。先輩教師は担任している6年生に「動物の旗」を作ってもらい、運動会にそれを来入児に拾ってもらいました。あちこちの学校で、日の丸の旗を飾らないように校長かけあったり、音楽の時間に「君が代」を教えるときに工夫したり、儀式のときにピアノ伴奏を拒否したり様々な工夫をして闘っていました。戦争加害の現場のある勤務校では、総合学習でテーマにしたり、中国からの帰国の同級生を迎えた勤務校では「満蒙開拓の歴史」をアニメや映像で知らせたりしました。この間「平和教育」を積極的に行おうとする教職員は、先の戦争の責任をあいまいにして正当化する勢力からは「政治的」な教師として疎まれました。でもこの攻撃に屈して、本当に子ども達に戦争の反省を伝えてきただろうか・・・と反省しきりなのです。平和教育にも「失われた30年」を思います。私たちの責任です。
 ソ連のウクライナ侵攻以後、「平和」は誰しもの願いになり、その大切さを継承する世論の高まりから、「平和教育」の新たな機運が広がりました。でも今、親となり現役世代となった教え子たちに、私たちが教室で伝えてこなければいけなかったことがあったと思います。反省と後悔と。

Posted by 長野の子ども白書編集委員会. at 2024年08月15日08:36

この記事のコメント

新しい平和憲法のもとで、二度と再び教え子を戦場に送らない熱い思いの先生たちに教えられた最後?の世代として、次回の白書のテーマは、ずはり、平和教育というのはどうでしょうか。
2015年の安保法制閣議決定以来まさに、戦前、いやすでに、戦時中か?!と思われるような事態に至っているのでは?と危機感を覚えます。子どもたちはウクライナやガザの今を見聞きし、ほんとうに心を痛めています。
日本の加害の歴史も含めて、どう伝え、戦争しないためには、どうしたらよいのでしょう。子どもとおとなで、いっしょに考えたい。
Posted by 由井厚子 at 2024年09月06日 15:55
由井厚子様
本当にその通りです。私の中では、2024を平和特集にしたいところでした。ただ、いくつかの条件が折り合わず、今回のような編集になりました。今一番子どもと一緒に考えたいのは、地球環境のことと平和のことです。子どもたちの今と将来に直結する課題だと思います。今年は後半「子どもの権利条約」の啓発にとりかかります。子ども・若者が社会を変えていくために、まず主権者としての子どもを育て守る社会に働きかけたいと思います。ありがとうございました。
Posted by 長野の子ども白書編集委員会長野の子ども白書編集委員会. at 2024年09月06日 21:10
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